2023.09.04
SAPベーシス・システム移行

SAP ERPからSAP S/4HANAへのコンバージョン

前提

A社では基幹システムとして、SAP社ERPパッケージのSAP ERP 6.0 EhP7を導入していました。
SAP ERPは保守サポートが2025年12月31日(※1)で切れるため、次期ERPのSAP S/4HANA(SAP S/4HANA 1909 FPS01)へシステム移行(コンバージョン)するか延長保守(※2)を契約するかの対応を迫られていましたが、A社ではSAP S/4HANAにシステム移行することとなりました。
また、システム移行に伴いH/Wリプレースを合わせて実施することになりましたので、新環境でSAP S/4HANAを構築することになりました。

※1:現在は保守サポートの期限が2027年12月31日に変更されています。
※2:延長保守の期限は2030年12月31日となります。

レイエントシステムでは、システム移行(コンバージョン)を担当しました。

システム移行の流れ

A社の基幹システムは、本番機、検証機、開発機の3ランドスケープで構成されていました。
新環境への移行後も同様に本番機、検証機、開発機の3ランドスケープ構成となります。
このため、今回のシステム移行では、3環境全てをSAP ERPからSAP S/4HANAへのコンバージョン(アップグレード)を行い、新環境に移行することになりました。
A社基幹システムのシステム移行は、以下の流れで進めました。

移行方式の検討

A社では現行のSAP ERPに蓄積されている業務データ(マスタデータ、トランザクションデータ)、カスタマイズデータやアドオンデータ(アドオンプログラム等)を新環境のSAP S/4HANAでも引き続ぐため、現行環境から新環境へデータを移行する必要がありました。
現行のSAP ERPのデータベース管理システム(DBMS)はMS SQL Serverを採用しており、新環境のSAP S/4HANAではDBMSはSAP HANAデータベース(※3)となるため、新環境にデータを移行するためには、DBMSのマイグレーションを実施する必要がありました。
このため、今回のシステム移行では、SAP ERPからSAP S/4HANAへのアップグレードと、DBMSのマイグレーションを実行する必要がありました。

※3:SAP S/4HANAのDBMSは、SAP HANAデータベースを専用として構成されているため。

A社では、現行環境のデータを引き継ぐため、「BrownfieldによるSAP S/4HANAへのコンバージョン方式」で移行することに決定しました。
Brownfieldによるコンバージョンは、SAP社の標準ツール「Software Update Manager」(SUM)を使用することで、SAP S/4HANAへのアップグレードを実行することが可能となります。
このため、SAP ERPからSAP S/4HANAへのコンバージョン(アップグレードとマイグレーション)は、SUMを使用することに決定しました。

移行ステップ

A社でのシステム移行は、中間機を用意(理由は後述を参照)し、現行環境のデータを一旦中間機に移行してから、SUMを使用してSAP S/4HANAへのアップグレードを実行します。
システム移行は、以下のステップで実施することにしました。
 ① 現行環境のデータベースをMS SQL Serverのデタッチ機能を使用して、現行環境のデータを抽出する。
 ② 現行環境から抽出したデータベースを中間機のMS SQL Serverのアタッチ機能を使用して、中間機にデータを移行する。
 ③ 中間機でSoftware Provisioning Manager(SWPM)によるシステムコピーを実行して、中間機上に現行
  環境と同じ状態のSAP ERPシステムを構築する。
 ④ 中間機でSoftware Database Miguration Option of Software Update Manager(DMO of SUM)に
  よるSAP S/4HANAへのアップグレードとDBMSのマイグレーションを実行して、新環境にSAP S/4HANAシステムを構築する。​

結論

A社のシステム移行は、検討した移行方式、移行ステップにより問題なく、SAP ERPからSAP S/4HANAへの移行(コンバージョン)を完了させることができました。

POINT

A社でのシステム移行では、以下の2つのポイントがありました。

POINT①

コンバージョンを実施するにあたり、現行環境への設定変更が禁止されており、現行環境に影響を与えない移行方法を検討する必要がありました。
このため、SUMによるコンバージョンで現行環境に設定変更が発生しないようにするめに、中間機を準備することを検討しました。
中間機に現行環境と同じSAP ERPシステムを構築して、コンバージョンによる設定変更が現行環境に影響を与えないようにシステム移行を進めることにしました。

この結果、移行失敗時も現行環境での業務継続が可能となり、現行環境に影響を与えることのない安全なシステム移行を実現しました。

POINT②

A社のシステム移行では、SAP ERPシステムからSAP S/4HANAシステムへのコンバージョンによるテクニカルアップグレード(A)と、現行環境の全データを新環境に移行するためのDBMSのマイグレーション(B)を実施する必要があります。
AとBを別々で実施すると、システム移行全体のダウンタイム時間の長時間化が懸念されるため、ダウンタイム時間を短縮するための方法を検討する必要がありました。

A社では、SUMによるアップグレード中にDBMSのマイグレーションも実行してくれるオプション「Database Migration Option」(DMO of SUM)を使用することで、AとBを纏めて実施することが可能となりました。

この結果、システム移行時のダウンタイム時間の短縮に成功しました。

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