SAP BO/SAP DSのデータ移行
前提
B社では基幹システムとして、以下のSAP社パッケージ製品を導入していました。
・SAP BusinessObjects Business Intelligence platform 4.2 SP5
・SAP Data Services 4.2 SP8
SAP BusinessObjects Business Intelligence platform(以下、SAP BOとする)の保守サポート(※1)が切れるため、最新バージョンへのバージョンアップを検討していました。
※1:SAP BOの保守サポートの期限は2022年12月31日(Priority-Oneサポートの期限は2024年12月31日)
また、基幹システムが構築されているプラットフォームのサービスが終了するため、SAP BOの最新バージョンへのバージョンアップに合わせて、新プラットフォームへSAP SAP BO、SAP Data Services(以下、SAP DSとする)を移行することになりました。
システム移行の流れ
B社の基幹システムは、本番機、検証機、開発機の3ランドスケープで構成されていました。新プラットフォームへの移行後も、同じ本番機、検証機、開発機の3ランドスケープで構成することになります。このため、SAP BO、SAP DSの全システムで3環境すべてを新プラットフォームに移行し、SAP BOのバージョンアップを実施することになりました。B社の基幹システムのシステム移行は、以下の流れで進めました。
移行方式の検討
今回の新プラットフォームへの移行にあたって、OSとDBMSを変更(マイグレーション)しないことに決定しました。
SAP ERP製品などはSAP社標準移行ツールを使用したデータ移行が可能ですが、SAP BO、SAP DSはSAP ERPのようにSAP社標準のシステム移行ツールが用意されていないため、データ移行の実現方法を検討する必要がありました。
SAP BO、SAP DSはデータ移行のためのSAP社標準システム移行ツールが用意されていません。そのため現行プラットフォームのデータベースからデータを抽出し、新プラットフォームのデータベースにでデータを取り込む方法を検討する必要があります。SAP BO、SAP DSは下記のデータベースが存在しており、各データベースごとにデータの移行方法を個別に検討する必要がありました。
・SAP BO CMSデータベース、監査データベース
・SAP DS CMSデータベース、監査データベース、リポジトリデータベース
■CMSデータベース
CMSデータベースのデータ移行は、以下の2方式が考えられました。
① SAP BO/SAP DSのSAP標準機能のExport/Import機能でデータを移行
② MS SQL Serverの標準機能のデタッチ/アタッチ機能でデータを移行
今回のシステム移行では、CMSデータベースは方式①でデータを移行することに決定しました。(理由は後述のPoint①を参照ください)
■監査データベース
監査データベースには、SAP標準機能にデータのExport/Import機能が存在しません。このため、監査データベースは、MS SQL Serverの標準機能のデタッチ/アタッチ機能でデータを移行することに決定しました。(理由は後述のPoint②を参照ください)
■リポジトリデータベース
リポジトリデータベースのデータ移行は、以下の2方式が考えられました。
① SAP DS専用ツール(DS Designer)のExport/Import機能でデータを移行
② MS SQL Serverの標準機能のデタッチ/アタッチ機能でデータを移行
今回のシステム移行では、リポジトリデータベースは方式①でデータを移行することに決定しました。(理由は後述のPOINT③を参照ください)
B社でのSAP BO、SAP DSのデータベースごとの移行方式は、以下の通りに実施することにしました。
SAP BO | SAP DS | |
CMSデータベース | Export/Import (SAP BO標準機能) |
Export/Import (SAP DS標準機能) |
監査データベース | デタッチ/アタッチ (MS SQL Server機能) |
デタッチ/アタッチ (MS SQL Server機能) |
リポジトリデータベース | ─ | デタッチ/アタッチ (MS SQL Server機能) |
移行ステップ
SAP BO、SAP DSの移行は、以下のステップで実施しました。
■SAP BOの移行ステップ
① 現行プラットフォームのSAP BO標準機能を使用してCMSデータベースのデータをエクスポート
② 現行プラットフォームのMS SQL Server標準機能を使用して監査データベースをデタッチ
③ 新プラットフォームのMS SQL Server標準機能を使用してMS SQL Serverに監査データベースをアタッチ
④ 新プラットフォームでSAP BO 4.3 SP1をインストール
⑤ 新プラットフォームのSAP BO標準機能を使用してエクスポートしたCMSデータベースのデータをインポート
■SAP DSの移行ステップ
① 現行プラットフォームのSAP DS標準機能を使用してCMSデータベースのデータをエクスポート
② 現行プラットフォームのMS SQL Server標準機能を使用して監査データベース・リポジトリデータベースをデタッチ
③ 新プラットフォームのMS SQL Server標準機能を使用してMS SQL Serverに監査データベース・リポジトリデータベースをアタッチ
④ 新プラットフォームでSAP DS 4.2 SP8をインストール
⑤ 新プラットフォームのSAP DS標準機能を使用してエクスポートしたCMSデータベースのデータをインポート
結論
B社の移行では検討した移行ステップで、開発機、検証機、移行リハーサルと進めたことで、本番移行では大きな問題は発生せずに移行を完了させることができました。
また、各データベースごとに検討したデータの移行方法により、現行環境から新環境へデータの移行漏れもなく、移行が完了しました。
POINT
B社での、システム移行では以下のポイントがありました。
POINT①
CMSデータベースには、以下の2つのデータ移行方式が考えられました。
① SAP BO/SAP DSのSAP標準機能のExport/Import機能でデータを移行
② MS SQL Serverの標準機能のデタッチ/アタッチ機能でデータを移行
方式①ではCMSデータベース内のデータを個別にエクスポートすることが可能なため、必要なデータのみを移行することが可能であると考えられました。
(個別にデータをExport/Importするためデータ移行の時間が増大する可能性もあった)
CMSデータベースには、BIプラットフォーム情報などが格納されています。
方式②でデータを移行する場合、データベース内の全てデータが移行されるため、環境固有の情報が置き換わってしまい、新環境で動作不備が発生する可能性が考えらました。
このため、CMSデータベースは方式①でデータ移行を実現しました。
POINT②
監査データベースは、SAP標準機能にデータをExport/Importする機能が存在しませんでした。そのため、監査データベースについては、データの移行方法をSAP標準機能以外で検討する必要がありました。
B社では今回の新プラットフォームで導入するDBMSは、現行プラットフォームのDBMSと同じMS SQL Serverを導入することになっていました。このMS SQL Serverには標準機能として、データベースをデタッチ/アタッチしてデータを移行する方法があり、また、移行元環境と移行先環境とでバージョンが異なっていてもデタッチ/アタッチによるデータ移行がサポートされています。
このため、監査データベースはMS SQL Serverの標準機能のデタッチ/アタッチ機能でデータ移行を実現しました。
POINT③
リポジトリデータベースには、以下の2つのデータ移行方式が考えられました。
① DS DesignerでのデータのExport/Importによる移行
② MS SQL Server標準機能(デタッチ/アタッチ)による移行
方式①では移行するデータを個別にExport/Importする必要があると考えらました。
方式②はデータベース全体を移行するため、全てのデータが移行可能だと考えらました。
方式①、②を比較したときに、
方式①は、移行対象が多ければ多いほどデータのExport/Importの回数が増えてしまう
方式②は、データベース全体で移行できるため1回で移行可能となる
そのため、方式②の方が移行時間を短くすることが可能であると考えれました。
このため、リポジトリデータベースは方式①のMS SQL Serverの標準機能(デタッチ/アタッチ)でデータ移行を実現しました。