SAPプロファイルパラメータ

今回は、SAPシステムでのパラメータの管理についてご説明します。
※SAP S/4HANAなどのABAP Platformベースの製品やSAP NetWeaverベースの製品が対象です。
SAPプロファイルパラメータ ( Profile Parameter ) は、SAPシステムの動作設定 ( ワークプロセス数、メモリサイズ、ディレクトリパス、セキュリティ設定など ) を定義するパラメータとなります。
SAPシステムのパラメータは、SAPカーネルにハードコーディングされており、SAPカーネルに定義されているパラメータ値がデフォルト値として採用されます。
デフォルト値からパラメータ値を変更したい場合は、SAPプロファイルにパラメータを定義することで、変更することが可能となります。SAPプロファイルに定義されていないパラメータは、デフォルト値が使用されます。
( SAPプロファイルはOS上のファイルで、そのファイルにパラメータを定義することで、デフォルト値から変更することが可能となる )

■ SAPプロファイルの種類
SAPプロファイルには、いくつかの種類があります。それぞれのプロファイルを説明していきます。
● デフォルトプロファイル ( Default Profile )
ファイル名:DEFAULT.PFL
全てのインスタンス ( アプリケーションサーバ ) で共通の設定となるパラメータを定義するプロファイル。
データベースのホスト名、DBID、SAPグローバルホスト名、メッセージサーバやエンキューサーバのホスト名など、インスタンス間での共通設定を定義します。
SAPシステム内で1ファイルのみ作成されます。
● インスタンスプロファイル ( Instance Profile )
ファイル名:<SID>_<Instance>_<Host Name>
インスタンス ( アプリケーションサーバ ) 個別に設定が必要なパラメータを定義するプロファイル。
各ワークプロセスの数やSAPメモリの設定値など、個々のインスタンス間で設定値を変える場合に定義します。
SAPシステム内でインスタンス毎にファイルが作成されます。
SAPプロファイルは以下に格納されています。
OS | 格納先 |
---|---|
Windows | \\<SAPGLOBALHOST>\sapmnt\<SID>\SYS\profile ※1 |
Linux | /usr/sap/<SID>/SYS/profile ※2 |
※1 : (A)SCSインスタンスの「<Drive>:\usr\sap\<SID>\SYS\profile」
※2:(A)SCSインスタンスのディレクトリ

古いバージョンでは、スタートプロファイル ( START_<Instance>_<Host Name> ) と呼ばれるプロファイルも存在しました。
スタートプロファイルは、インスタンス起動時に、どのSAPサービスを起動するかを定義するプロファイルとなり、現在ではインスタンスプロファイルに統合されています。
■ プロファイルパラメータ更新方法
SAPプロファイルへのプロファイルパラメータの追加 / 変更 / 削除は、以下の方法で更新することができます。
① トランザクションコード RZ10 から更新
② プロファイルを直接更新
● トランザクションコード RZ10 からパラメータ更新
トランザクションコード RZ10 からSAPプロファイルへのパラメータを更新することが可能です。
トランザクションコード RZ10 では、パラメータのチェック機能があるため、更新時にパラメータ名やパラメータ値の文字列の誤りや、パラメータ値の制限に引っ掛かっているかなどの確認が同時に実施できます。
なお、トランザクションコード RZ10 からプロファイルを更新するとOS上のファイルが更新されるのと、ファイルのバックアップも作成されます。
SAPプロファイルはバージョンがデータベースで管理されており、トランザクションコード RZ10から古いバージョンのプロファイルを確認することも可能です。
● プロファイルを直接更新
OS上のファイルを直接更新することも可能です。
OS上のファイルを直接更新する場合は、ファイルのバックアップもパラメータのチェックも実行されないため更新時には注意が必要です。
※プロファイル更新時の注意事項
SAPプロファイルを更新してもSAPシステムには即時反映されません。
SAPシステムは起動時にプロファイルを読み込む仕様となっているため、更新を反映するためにはSAPシステムの再起動が必要となります。
なお、トランザクションコード RZ11 を使用するとオンラインでパラメータを更新することも可能です ( オンラインで更新が可能なパラメータのみ ) 。
プロファイルには反映されないため、SAPシステムを再起動すると元のパラメータ値に戻ることになります。
■ プロファイルパラメータの読み込み順序
SAPシステムは、(A)SCSインスタンス → PAS/AASインスタンスの順番で起動します。
SAPプロファイル ( パラメータ ) は、各SAPインスタンス起動時に読み込まれます。
パラメータは、①SAPカーネルのパラメータ、②デフォルトプロファイル、③インスタンスプロファイルの順番で読み込まれます。
※スタートプロファイルが存在する場合は、①SAPカーネル、②スタートプロファイル、③デフォルトプロファイル、④インスタンスプロファイルの順番でパラメータが読み込まれます。

SAPプロファイルが順番に読み込まれるため、デフォルトプロファイルとインスタンスプロファイルで同じパラメータで異なるパラメータ値が定義されている場合、読み込まれる順番が後ろのインスタンスプロファイルのパラメータ値が使用されます。
また、プロファイルはファイルの1行目から読み込まれるため、同じパラメータが複数の行で定義されている場合は、最後に定義されたパラメータが使用されます。
■ パラメータの一覧表示
トランザクションコード RZ11 を使用すると、現在値とデフォルト値を確認することが可能となりますが、パラメータ1つしか表示できません。
SAPシステムは1000個以上のパラメータで構成されており、トランザクションコード RZ11 からでは全てを確認することができません。
プロファイルパラメータを一覧表示するには、ABAPプログラム 「 RSPFPAR 」 を実行することで、パラメータの一覧が表示できます。
なお、SAP製品のバージョンやSAPカーネルのバージョンにより、プロファイルパラメータの数やデフォルト値が変わってきます。