2025.08.04

SAP S/4HANAのマイグレーション+アップグレード紹介(第二回目:ターゲットシステムの事前準備)

はじめに

SAP S/4HANAのマイグレーション+アップグレード紹介の第二回目となります。
今回はターゲットシステム側の事前準備についての紹介になります。

No内容
1環境の説明と実施方法
2ターゲットシステムの事前準備
3ソースシステムの事前準備
4マイグレーション+アップグレードの実施
5マイグレーション+アップグレード後処理

ターゲットシステムの事前準備

SAP HANAデータベースとSAP S/4HANAそれぞれのインストール時に実施する内容についてポイントとなる部分を記載します。

SAP HANAデータベースのインストールについて

SAP HANAデータベースのインストールについては、特に通常時のインストールと違う点は発生しませんので、以下の対応を行います。

①SAP HANAデータベースサーバのOSのインストールと設定について
まずは、SLES 15を使用するためのOSのインストールと設定については、以下のSAPノートを参照して対応を実施します。

SAP Note 2578899 – SUSE Linux Enterprise Server 15: インストールノート
SAP Note 2684254 – SAP HANA DB: SLES 15/SLES for SAP Applications 15 に対して推奨される OS 設定
SAP Note 1275776 – Linux: SAP 環境に対する SLES の準備

「SAP Note 1275776 – Linux: SAP 環境に対する SLES の準備」については、saptuneとsapconfの2つの設定ツールについて紹介されていますが、SLES for SAP Applicationsのライセンスを購入されている場合はsaptuneを使用し、そうでない場合はsapconfを使用して設定作業を実施します。
saptuneで設定対応する方が自動的に推奨パラメータが設定される範囲が多く、使用する製品毎にプロファイルも提供されているため、パラメータ設定が効率的に実施可能です。

②SAP HANAデータベースのインストールに必要となる追加パッケージについて
SAP HANAのインストールに当たっては、追加でパッケージのインストールが必要になるため、そちらのインストールも実施します。

SAP Note 3029056 – 共有ライブラリのロード時のエラー: libltdl.so.7: 共有オブジェクトファイルを開くことができません: そのようなファイルまたはディレクトリがありません
SAP Note 3216146 – Linux: GCC 11.x でコンパイルされた SAP アプリケーションの実行

③SAP HANAデータベースのインストール方法について
SAP HANAデータベースのインストールについては、過去に紹介させていただいている以下のブログ記事の内容とほとんど変わらないため、そちらを参照いただければと思います。

SAP S/4HANA インストール紹介(第二回目:SAP HANAのインストールとSAP S/4HANAとの同居の場合のメモリ設定)

④SAP HANAデータベースインストール後の対応について
インストール完了後に自動的に作成されているSAP HANAデータベースのSIDと同名のテナントデータベースが作成されていますが、不要であり残しておくとディスクとメモリを一部消費するため削除します。
実施方法は、以下のブログ記事の「④テナントデータベースの削除」で紹介している内容で対応可能です。

SAP S/4HANA インストール紹介(第九回目:その他対応)

S/4HANAのインストールについて

ターゲット側のSAP S/4HANAのインストールでは、インストール処理のみを行い、その後のプロファイルパラメータ調整後に作成されたテナントデータベースの削除を実施します。

①SAP S/4HANA APサーバのOSのインストールと設定について
OSのインストールと設定については、「①SAP HANAデータベースサーバのOSのインストールと設定について」で、紹介した内容から「SAP HANA DB: SLES 15/SLES for SAP Applications 15 に対して推奨される OS 設定」を除いて、対応を実施します。

②SAP S/4HANAのインストールについて
SAP S/4HANAのインストールは、通常通りインストールを実施します。インストール時のSWPMの操作内容については、バージョンの違いはありますが操作方法と入力が求められる内容については、ほぼ変更点がないため、以下のブログ記事を参考にしていただければと思います。

SAP S/4HANA インストール紹介(第三回目:S/4HANAインストール(SWPM実行))

OSユーザの作成はSWPMで実施されますが、これらのユーザはそのままマイグレーション後も使用することになるため、稼働時を想定した状態でUID、GID、パスワード設定することをお勧めします。
インストール完了後、SAP S/4HANAのインスタンスは停止し、OS上でSAP S/4HANAのプロファイルパラメータを移行用 ( ワークプロセス数やメモリ設定 ) に調整したパラメータに修正を実施します。

③SAP S/4HANAインストール後の対応について
最後に、現状インストールが完了して作成されたSAP S/4HANAと同一SIDのテナントデータベースの削除を実施します。テナントデータベースはSUMでの移行時に再作成することになりますので、このタイミングで削除を実施する方が、少しですが移行時の時間短縮となります。

その他の対応について

①アップグレード用メディアの配置
SUMで使用するアップグレード用メディアをSAP S/4HANAのAPサーバにアップロードする必要があります。

②SUM領域の確保実施
ターゲット側のSAP S/4HANA APサーバ上にデータエクスポートされたSUMの格納先の領域を用意します。これは今後の作業の関係上、/usr/sap/<SID>/SUMディレクトリの配下に配置することになります。
領域に余裕がない場合は、余裕があるボリュームを確認して、シンボリックリンクを作成します。ディスク追加で対応できる場合は、上記のパスにディスクマウントを実施します。
今回の環境で実施した結果ですが、業務データが入っていない状態でSUM処理完了まで、約60GBほど領域を使用しました。業務データがある環境ではさらに、ディスクが必要となりますので、事前に計画しておく必要があります。

③ネットワーク設定について
ソースシステムからターゲットシステムのSAP S/4HANA APサーバ間でSSH接続ができるように、ネットワーク設定が実施されている必要があります。これはソースシステムのSUMディレクトリの内容が、ターゲットシステムのSAP S/4HANA APサーバに転送される際に必要となります。

以上で、ターゲットシステム側で実施する事前準備対応は完了となります。
次回では、ソースシステム側の事前準備作業について、ポイントの説明を実施します。

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