SAP S/4HANAのマイグレーション+アップグレード紹介(第五回目:マイグレーション+アップグレード後処理)

はじめに
SAP S/4HANAのマイグレーション+アップグレード紹介の第五回目となります。
今回は、Software Upgrade Manager(SUM)でのマイグレーション+アップグレード完了後の後処理についての説明となります。
| No | 内容 |
|---|---|
| 1 | 環境の説明と実施方法 |
| 2 | ターゲットシステムの事前準備 |
| 3 | ソースシステムの事前準備 |
| 4 | マイグレーション+アップグレードの実施 |
| 5 | マイグレーション+アップグレード後処理 |
実施対象のガイドについて
実施するガイドについては、以下の2つの「Follow-Up Activities」フェーズを実施することが基本となります。
なぜ、システムコピーガイドを参照するのかという点についてですが、SUMで実施される処理は、システムコピーが実施されたのちにアップグレード処理が実施されるという動作をするため、システムコピーガイドの内容についても後処理対象とする必要性があります。
そのため、システムコピーガイドに記載されている内容を実施して、データベースの内容に登録されているソースシステム側のホスト情報などの情報を修正する作業を実施する必要があります。
ガイドに記載されていない内容について
ここではガイドに明記されていませんが、一般的にどのシステムでも実施・確認するべき内容について、3つ説明します。
また、環境固有で実施しなくてはいけない後処理なども、ガイドには記載されていないため、移行担当するベーシス担当者にて顧客環境の状態を確認して、作成を実施します。
・DBパラメータ
移行先のSAP HANAデータベースに対して、SUM完了時点では、推奨パラメータの設定が完了していません。
そのため、SAP Note 2600030の説明に従った推奨SAP HANAパラメータの適用と、ソースシステムで環境固有で設定しているパラメータについて、必要性があれば設定を実施します。
・SAPパラメータ
基本的にはソースシステムで稼働しているプロファイルパラメータの内容をターゲットシステムに設定実施すれば問題ない場合が多いですが、漏れやすいのがプロファイルパラメータに記載されていないパラメータに対する対応です。
よくある事例としては、パスワードに関するパラメータです。以下のパラメータについては、ソースシステムのバージョンからデフォルト値が変更されている場合が多く、問題になりやすいです。
プロファイルパラメータに明示的に値が設定されていないパラメータで、顧客要件が存在するものについては、注意して確認しておく必要があります。
<SAP S/4HANA2023の場合のパスワード関連のプロファイルパラメータ>

・エンタープライズサーチに対する後処理
ソースシステムで、Fioriを使用できるように設定している場合などは、エンタープライズサーチに対する設定も実施しているため、この部分に対しても後処理が必要になります。
ソースシステムからSIDを変更している場合は、タスクリスト「SAP_ESH_ADJUST_AFTER_COPY」を実行して、調整を行います。
・ソースシステムに対しての後処理
SUM処理のデータエクスポート時には、ソースシステムに対して、SAP GUIからのログオンが出来ないように設定されます。

しかし、この状態では、顧客やアプリ側で移行後のデータ差異の確認作業等が行えないため、SAPGUIでのログオンが可能にして欲しいという要望が発生します。
そのため、この設定の解除作業を行います。
まず、ソースシステムのSAPインスタンスが停止していることを確認後、ソースシステムにてマイグレーション+アップグレードで使用していたSUMを起動します。
※ここでポイントとなるのが、新しくSUMを展開せずに使用していたSUMを起動するという点になります。

ブラウザで、SUMに接続しOSユーザのadmでログイン後、以下の画面でNextをクリックします。

右側のユーザメニューから、Resetを実行します。

Yesを選択して、Nextをクリックする。処理完了後、ユーザメニューからExitをクリックして、SUMを終了させます。

上記の対応により、ソースシステムはSUMの状態がリセットされ、システムに再接続が可能となります。
アップグレード実行中のログオンロックを解除する方法を調査すると、「tp unlocksys」を紹介している情報が確認できると思いますが、こちらはアップグレードしている途中のシステムに対して問題が発生し、SAPノート適用作業等を実施する場合に用いる方法となります。
ソースシステムに元の状態でログインする必要がある場合は、今回ご紹介した方法の利用を推奨します。また、この方法にはSUMの実行をリセットできるというメリットがあり、ソースシステムを再度利用することがが可能となります。
「tp unlocksys」を用いた場合は、アップグレード中のシステムステータスのままとなります。そのため、上記の対応を実施するためにも、ソースシステム側のSUMフォルダは不要になるまで、削除せずに残したままにしておくことをお勧めします。
マイグレーション+アップグレード後処理についての説明は、以上となります。
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